可能性と後悔

わかりあえない僕たちは

好きになってしまったひとのこと

あなたは言った。

「私があなたを恋愛対象として見れないのは変わらない。これからあなたが、私と会い続けるのか、それとも一生会わないことにするのか、それはあなたの決断の問題だから、私にはなにも言う権利はないよ」

あなたの言うことは正しい。

いつだって正しい。

だけどその言葉を聞いてぼくのこころは腐ったトマトみたいにぐちゃぐちゃになってしまった。

あなたに、せめてあなたに

「私があなたを恋愛対象として見れないのは変わらない。だけど、友達としては好きだから、これからも会い続けてほしい。これは私のわがままだってわかっているけど、それでもお願い」

と言ってほしかった。

そういわれたかった。

あなたの言うことは正しい。

だけど、その正しさを超えて、正しくない決断に至るだけの親密さ、あるいはささやかな愛情のようなものを示してほしかった。

それだけあれば、ぼくは生きてゆけた。

これから会い続けること。これから一生会わないこと。

それをぼくの意思決定の問題として委ねることは正しいけれど、まったく優しくはなかったよ。

それはまるでぼくには

「私はあなたにはまったく興味がないです」

という死刑宣告に等しかった。

ぼくはあなたに、その場しのぎでもいいから優しさを、真似事でもいいから愛情の、片鱗を示してほしかった。

それだけでぼくは生きてゆけた。