『リップヴァンウィンクルの花嫁』に関するニ、三の事柄
ひとより少しだけ優しすぎた女の子の物語。
監督、好きなタイプわかりやす過ぎて可愛い。
物語の前半、黒木華演じる七海は泡沫が弾けるように急速に不幸のどん底に堕ちていく。
ただ、この展開があまりに御都合主義めいていて、個人的には「えっ、ウソ… こんなにストーリー粗くてエエの…」という気持ちを抱いてしまった。
それでも次第に粗い展開すら心地よくなってきて、「ああ、これはファンタジーとして受けとめるべきだったのネ…」と気づかされる。
なんてったって“リップヴァンウィンクル”なんだし。
でもやっぱり、物語の底に流れるテーマ(結婚というシステムの欺瞞、AV女優の孤独、SNS恋愛など)はとても《リアル》で、このファンタジーとリアルの絶妙なミックスが岩井作品の醍醐味、なのかも。
終盤、真白の母が突如脱ぐ。
そしてふざけてるのか本気で心動かされてるのかよくわからん安室も脱ぐ。
もうみんながみんなわけわかんなくなって泣いて笑って酒を飲む。
全員、根っからの悪いひとじゃないんだよな。
少しだけ、ほんの少し不器用なだけなのよね。
七海の着崩れた姿がとても美しい。
新しい生活を始めた七海に対し、ネット上での繋がりしかない引きこもりの少女が問う。
「東京ってどんなとこ?」
七海は
「怖いところだよ」なんて陳腐な答えはしない。
でもやっぱり明確に答えることも出来ない。ただ代わりに、もし東京に来たら七海が案内してあげる約束をする。
七海はこれだけ辛いことがあったにも関わらず、いまだ“東京”に住み続け、そして闘い続けている。
ひとりの自立した女性の姿がそこにはあった。
映画を見たあと、こんなに皆の感想を読み漁ってしまう映画はなかった。
良いとか悪いとか、好きとか嫌いとかじゃなくて。
この映画を見てみんながなにを感じ考え想っていたのか、それが知りたくて知りたくてたまらなくなる映画だった。