可能性と後悔

わかりあえない僕たちは

空の青、哀しみの青

先日、小学校の同窓会があった。
同窓会と言っても、当時仲の良かった8人程度にしか声のかかってない小規模なものだ。
それでも、久々の"同窓会"という甘美な響きに若干の期待を抱きながら、ぼくは待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ時間の30分前、「ちょっと早すぎたかな…」なんて思いながら渋谷駅に降り立つと、人、人、人の波に揉まれたぼくの淡い期待は霧散し、早くも逃げ帰りたくなっていた。
それでも自分の中に残っていた理性を振り絞って待ち合わせ場所で他の皆が来るのを待っていた。
そう、ぼくが1番乗り。
1番乗りなんて、すごく楽しみにしていたみたいでかっこ悪いよな。5分遅刻してくるくらいの余裕を見せつけてやれば良かったよ。
そんなこと思いながら待っていた。

人を待っているときの時間の経過って、普段より遅く感じられて苦手。
どしっと構えて待っていられればいいんだけど、小心者のぼくはジリジリするような焦燥感に駆られてダメなんだよね。

5分経った頃、1人の女の子が人混みを縫ってぼくの方へ向かってきた。
『もう来てたんだ〜 早いね!』
久々に見る彼女は、上手に化粧をして、綺麗な都会の女の子になっていた…


ーーーここまではフィクション。ーーー

ごめんね、今の全部作り話。
もし、みんなが初恋の人でも思い出すきっかけになったなら嬉しい。
ただ、同窓会のお誘いがあったとこまではホント。
けど、ぼく行かなかったんだよね。
時間が合わなかったとか、嫌いな友達がいたとか、そんな明確な理由があったわけじゃなくて、ただ、ただただ面倒だっただけ。あえてその日にバイト入れて、「バイトの人手が足りなくてその日行けなくなった。ごめん。」って連絡してそれっきり。
ぼくは、友情より6000円そこそこの給料を取った、サイテーな男。
薄情だ!って詰ってくれても構わない。
けど、君たちも「分かるわ〜」って思った人の方が多いんじゃない?
"同窓会"なんて、楽しいことより面倒なことの方が多い。
そう相場は決まってるもんだ。


ところで、なんでこんな文章を書く気になったかというと、昨日部屋の掃除をしていたら一冊のアルバムを見つけたから。
そのアルバムは小学生の修学旅行のときのもので、生徒1人1人に1つずつ配られた使い捨てカメラで撮った写真を、後で自分で台紙に貼りつけて作ったもの。
普通だったら友達や名所を撮った写真にクレパスで額縁でも描いて、「楽しかった!」とか「勉強になった!」とか形ばかりのコメントをつければ終わりなんだけど、当時のぼくはなぜか修学旅行先の空ばかり撮っていて、「この前撮った写真をアルバムにまとめましょう!」って後日先生に言われたとき、すごく困った思い出がある。

ページをいくら捲っても空の写真で、「空が綺麗でした。」

そんな感想しか書いてない、つまらないアルバムが完成した。



十数年ぶりに発掘されたそのアルバムは、すっかり埃をかぶっていた。

ぼくはそっとアルバムを開く。

青い台紙に幼い文字で書かれた表紙が目に入る。

ページをめくる。

久々に見た空の写真は、灰色にくすんでいた。