可能性と後悔

わかりあえない僕たちは

松明

忘れたいことも忘れたくないことも同じくらいたくさんあって。
でもやっぱり、忘れたいことの方がちょっぴり多い気もする。
ぼくはすごくわがままだから、みんなのことも綺麗さっぱり忘れてしまいたい!と思うんだけど、それでも、いざとなったら思い出せるように大事に金庫にしまっておきたいとも思う。
鍵はいつもの引き出しに入れて置くんだ。全部忘れちゃったら“いつもの”なんて意味はなくなっちゃうんだけど。
それでも、いつもの場所に。

なんでこんなに人間は不便なんだ。
スイッチ一つで記憶を消せるようにしてくれよ。
ぼくの感情も全て二進法で表せるようにしてくれよ。
愛してるか、愛してないか、胸のランプの点滅でわかるようにしてくれよ。
そしたら、きっとこんなに悩むこともないと思うんだ。約束は出来ないけど。

ねえ、みんなは何を期待しているの?何を信じているの?何に縋っているの?
ぼくらは何を期待して何を信じて何に縋っていけばいいの?
恋人とか、友達とか、家族とか、指先でちょいと押してやれば崩れてしまうような関係の中で、ぼくらが見つけることの出来る美しいものは一体なんなんだ。
ぼくらが、この真っ暗な洞窟の中から見つけだすことの出来る最も美しいものは一体なんなんだ。

火をください。
ここにあるはずの何かを探すための、火をください。